退職代行モームリの家宅捜索について【見解】

以前より弁護士法違反ではないかと噂されていた退職代行モームリ(東京都品川区/運営者:株式会社アルバトロス/代表取締役:谷本 慎二)と顧問弁護士(オーシャン綜合法律事務所 梶田潤弁護士/弁護士法人みやび 佐藤秀樹弁護士)の関連先へ家宅捜索が入りました。
本件について複数のメディア様よりお問い合わせをいただいておりますので、今回の退職代行モームリの運営会社(以下、モームリ)や顧問弁護士(以下、提携弁護士)への強制捜査についての当組合の見解を以下の通りまとめておくことにします。
モームリの違法性
私どもでは、今年5月より消費者保護・労働者保護の観点からモームリを利用し退職に失敗した方の相談・救済を行なっておりますが、そういった方からのヒアリングを踏まえ、以下のような問題点(違法性)があると考えております。
- 退職交渉の法的権限が一切ないにもかかわらず、実質的に退職交渉を行なっている(非弁行為)
- 提携弁護士に対して業務あっせん及び実質的な紹介料の支払いを行なっている(非弁提携)
- 2025年6月上旬まで、実際には通知や伝言しかできないにもかかわらず「労働組合との提携により退職交渉ができる」と偽って集客をしていた
- 過去の利用者で退職できなかった事例が複数あったにもかかわらず、ホームページ上などで「退職成功率100%継続」をうたって集客をしてきた
などの点で問題があったと見ています。
モームリと顧問弁護士の間での非弁提携
この内、今回の家宅捜索の容疑となっているモームリ側から提携弁護士への業務あっせん、運営実態のない労働組合「労働環境改善組合」を通じた実質的な“紹介料”の授受について少し詳しく触れてみることにします。
弁護士法では、弁護士ではない非弁提携業者が「報酬を得る目的で弁護士に対して業務をあっせんする」ことが禁じられており、この違法行為は一般的に「非弁提携」と呼ばれています。
モームリと提携弁護士(オーシャン綜合法律事務所 梶田潤弁護士/弁護士法人みやび 佐藤秀樹弁護士)の間にあったとされる「非弁提携」については、既に報道されている
- モームリ側から提携弁護士への顧客紹介と顧客情報の提供
- 提携弁護士側から労働組合を経由したモームリへの紹介料の支払い
ことは間違いなくあったと認識していますが、これだけに留まらず一部の弁護士からは
- 弁護士側からモームリへの顧客紹介と顧客情報の提供
- モームリ側から弁護士への紹介料の支払い
も存在し、違法に双方で顧客を融通し合い、利益を享受する関係にあったのではないかと考えています。
モームリや退職代行の今後について
現時点でモームリ(提携弁護士を含め)はまだ家宅捜索の段階で逮捕されているわけではありません。
しかしながら元社員や現社員から容疑を裏付ける情報提供がされている状態で、私どもが退職代行モームリを利用した方からのヒアリング内容とも合致していますので、逮捕に至る可能性は高そうです。
一方、今回の強制捜査はモームリと弁護士の間で互いに顧客を違法にあっせんし報酬を得ているという特殊な非弁提携の事案ということを考えると、退職代行業界全体に与える影響は限定的だと思われます。
とはいえ、退職交渉の法的権限が一切ない民間企業運営の退職代行に対し、非弁行為での捜査のメスが入る可能性は十分あり得ますので、今後の捜査の行方を注視したいと思います。

