退職代行モームリの家宅捜索について【見解】

以前より弁護士法違反ではないかと噂されていた退職代行モームリ(東京都品川区/運営者:株式会社アルバトロス/代表取締役:谷本 慎二)と顧問弁護士(オーシャン綜合法律事務所 梶田潤弁護士/弁護士法人みやび 佐藤秀樹弁護士)の関連先へ家宅捜索が入りました。
本件について複数のメディア様よりお問い合わせをいただいておりますので、今回の退職代行モームリの運営会社(以下、モームリ)や顧問弁護士(以下、提携弁護士)への強制捜査についての当組合の見解を以下の通りまとめておきます。
モームリの違法性について
私どもでは、今年5月より消費者保護・労働者保護の観点からモームリを利用し退職に失敗した方の相談・救済を行なっておりますが、そういった方からのヒアリングを踏まえ、以下のような問題点(違法性)があると考えております。
- 退職交渉の法的権限が一切ないにもかかわらず、実質的に退職交渉を行なっている(非弁行為)
- 提携弁護士に対して業務あっせん及び実質的な紹介料の支払いを行なっている(非弁提携)
- 2025年6月上旬まで、実際には通知や伝言しかできないにもかかわらず「労働組合との提携により退職交渉ができる」と偽って集客をしていた
- 過去の利用者で退職できなかった事例が複数あったにもかかわらず、ホームページ上などで「退職成功率100%継続」をうたって集客をしてきた
などの点で問題があったと見ています。
非弁行為とは
弁護士資格のない者が報酬を得る目的で法律事務を行う行為のことを指し、弁護士法第72条で禁止されています。
非弁提携とは
弁護士資格のない者が弁護士と一緒に違法な法律事務を行う関係を結ぶことを指し、弁護士法第27条で禁止されています。
モームリと顧問弁護士の間での非弁提携
この内、今回の家宅捜索の容疑となっているモームリ側から提携弁護士への業務あっせん、運営実態のない労働組合「労働環境改善組合」を通じた実質的な“紹介料”の授受について少し詳しく触れてみることにします。
弁護士法では、弁護士資格のない者が弁護士と一緒に違法な法律事務を行う関係を結ぶことが禁じられており、この違法行為は一般的に「非弁提携」と呼ばれています。
弁護士法 第27条(非弁護士との提携の禁止)
弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
モームリと提携弁護士(オーシャン綜合法律事務所 梶田潤弁護士/弁護士法人みやび 佐藤秀樹弁護士)の間にあったとされる「非弁提携」については「報酬を得る目的で弁護士に対して業務をあっせんする」といった内容で、既に報道されている
- モームリ側から提携弁護士への顧客紹介と顧客情報の提供
- 提携弁護士側から労働組合を経由したモームリへの紹介料の支払い
ことはついては間違いなくあったと認識していますが、私どもで行った相談者のヒアリング内容から判断すると、報道内容だけに留まらず一部の弁護士からは
- 弁護士側からモームリへの顧客紹介と顧客情報の提供
- モームリ側から弁護士への紹介料の支払い
も存在し、違法に双方で顧客を融通し合い、利益を享受する関係にあったのではないかと考えています。
モームリや退職代行の今後について
現時点でモームリ(提携弁護士を含め)はまだ家宅捜索の段階で逮捕されているわけではありません。
しかしながら元社員や現社員から容疑を裏付ける具体的な情報提供がされている状態で、我々が退職代行モームリを利用した方からヒアリングした内容とも合致していますので、逮捕に至る可能性は高いと考えています。
次に逮捕に至る場合の退職業界全体への影響についてですが、ポイントとなるのは「容疑の内容」になりそうです。
今回の強制捜査の容疑は、モームリと弁護士の間での顧客のあっせんと報酬の支払い(非弁提携)ですが、実態の無い労働組合を介在するという特殊な手法である為、容疑が「非弁提携」にとどまる場合は見せしめ的な逮捕劇となり、退職代行業界全体に与える影響は限定的で終わると思われます。
ただ、もし容疑が「退職交渉の法的権限が一切ないにもかかわらず、実質的に退職交渉を行なっていること(非弁行為)」にも及ぶようであれば、モームリが再起不能になるだけではなく、業界全体の約6割を占める民間企業の退職代行にも大きな影響が出ます。
具体的には(退職交渉の法的権限が一切ない)民間企業運営の退職代行は現在の内容での事業継続は難しくなる可能性が高まるでしょう。
どちらで収束するかは現時点では分かりませんが、今回の退職代行モームリに関連する家宅捜索が今後の退職代行業界を大きく左右することは間違いなく、捜査の行方を注視したいと思います。

